金陵の図(天 57)

吟譜(PDF)

作者:韋 莊

(八三六~九〇八?・九一〇?)晩唐の頃の詩人。杜陵(とりょう 陝西省(せいせいしょう)西安の附近)の人。字は端己(たんき)、中唐の詩人韋応物(いおうぶつ)四代目の子孫。 昭宗の乾寧(けんねい)元年の進士。校書郎(こうしょろう)に任ぜらる。

当時四川省にいた王建が反乱を起こしたので、朝廷は李詢(りじゅん)を 正使、韋莊を補佐として宣撫(せんぶ)におもむかせたが、韋莊はそのまま王建(おうけん)につかえ、王建が後蜀(ごしょく)王朝をたてるのに協力して、吏部侍郎尚書同平章事(りぶじろうしょうしょどうべんしょうじ 宰相(さいしょう))に任ぜられた。蜀の開国の制度は皆韋莊の定めるところである。 後蜀の都、成都郊外の、かつて杜甫が住んだ浣花草堂(かんかそうどう)を修復して自分の屋敷にした。著書に浣花集十巻、その他がある

語釈

*金陵・・・南京の古称 六朝時代の都。
*江雨・・・揚子江上に降りそそぐ雨。
*霏霏・・・雨や雪など細かくしとしとと降りしきるさま。
*六朝・・・呉(ご)・東晉(とうしん)・宋(そう)・斉(せい)・梁(りょう)・陳(ちん)の六ッの王朝。
*臺城・・・宮城(六朝時代天子の御所)。
*依舊・・・昔のまゝ 昔ながらに。
*煙・・・・もや かすみ

通釈

◎金陵(南京の古称)の図を見ての懐古詩であり題画詩でもある。
長江には雨がしとしとと降り、河辺には草が同じように茂っている。六朝時代の栄華は遠い昔の夢のようであり、今は鳥がむなしく鳴くばかりである。最も無情をそそるのは古い城址の柳に新しい芽が出、霧は昔と同じように十里の堤をおおっていることである。

範吟

範吟 鈴木精成