秦淮に泊す(天 138)

吟譜(PDF)

作者:杜 牧

(八〇三~八五二年)・晩唐の詩人。字は牧之[ぼくし]、号は樊川[はんせん]、陝西省長安県の人。 名家の出身にして八二八年進士に及第後、地方、中央の官を歴任し中書舎人(ちゅうしょしゃじん)となって没す。資性剛直、容姿美 しく歌舞を好み、青楼に浮名を流したこともあった。樊川文集二十巻、樊川詩集七巻あり、阿房宮賦[あぼうきゅ うふ]は早年の作にして文名を高めた。年五十歳。

語釈

*秦淮・・・・南京の近くを流れる川の名 秦代に開かれた運河 長江に注ぐ 両岸には酒楼多く 今に至るまで風流繁華の地
*寒水・・・・さむざむとした河で秦淮河をさす
*商女・・・・酒楼の歌姫
*亡國恨・・・南朝最後の陳王朝でその滅亡の悲哀
*後庭花・・・陳の後主叔宝(こうしゅしゅくほう)が 玉樹後庭花という曲を作り 歌舞音曲にふけりついに隋に亡ぼされる 故に亡国のうたといわれる。

通釈

夜霧が寒々とした水面にたちこめ、月の光は川辺の沙をつつみこむように照らしている。今宵六朝(りくちょう) 以来の名高い繁華の地である秦淮河に舟をとめて一泊したが、そこは酒楼の近くにあった。ふと聞けば歌妓(かぎ・歌姫)たちは、かの陳王朝の亡国の悲哀など知るはずもなく、江を隔てた(酒楼)あたりでは今も 「玉樹後庭花」が歌われているではないか。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)