春簾雨窓(天 142)

吟譜(PDF)

作者:賴鴨厓

(一八二五~一八五九年)(文政八年~安政六年)賴山陽の第三子として京都三本木町に生まれる。幕末の詩人。名は醇(じゅん)、字は子春(ししゅん)、通称は三樹または 三樹三郎と称し鴨厓、古狂生と号した。十八歳の時江戸に遊学し昌平黌(しょうへいこう)にて学ぶ傍ら佐藤一斎・梁川星巖等と 交流し精研する。勤王の志厚く京都に帰り星巖・梅田雲浜らと尊皇攘夷の大策を画(かく)するも安政の大獄に捕われ吉田松陰、 橋本左内等と共に安政六年十月小塚原で刑死す。その刑に臨(のぞ)むや従容として一首賦す(獄中作)。年三十五歳。

語釈

*別陰晴・・・陰は曇 曇と晴と区別する
*檐聲・・・・のきばにしたたる雨の音
*前後情・・・花の咲く前と咲いた後の気持

通釈

春は自然にやってきて、いつともなく去ってゆく。我々はそれをそのまま自然に送り迎えすればよい のである。それなのに人は晴れたといっては喜び雨だといっては憎むのは何としたことだろう。同じ雨でありながら花を散らす雨は、花を促(うまが)し開かせた雨である。同じ軒(のき)の雨だれの音も聞く時によって 好ましい雨、憎らしい雨と、このような情を催させるのである。

備考

窓の簾(すだれ)ごしに春雨の降るのを眺めて作った詩である

 

範吟

素読・範吟 鈴木精成