折楊柳(天 161)

吟譜(PDF)

作者:楊巨源

(七七〇?~?)中国,中唐の詩人。蒲中 (山西省蒲県) の人。字,景山。七八九年年進士に及第。国子司業にまで進んで八四〇年頃(七十歳)官を辞し郷里へ帰る。白居易,元じんと交遊があり,その詩は声律に意を用いた作品が多い。

語釈

*折楊柳・・・別離の時に歌う楽曲の名。
*楊柳・・・・もともと「揚」はかわやなぎ、「柳」はしだれやなぎを指すが、ここでは「揚柳」でやなぎの総称ととらえればよい。
*麴塵絲・・・黄緑色の芽をつけた柳の枝。「麴塵」はこうじのかび。カビの色が黄緑色をしているので、柳の芽にたとえられる。
*相惜・・・・(それ)を惜しんで。ここの「相」は「たがいに」の意ではなく、対象を示す用法。
*慇勤・・・・心をこめて。「慇懃」となっている本もある。
*更・・・・・いっそう。ますます。「肯」になっている本もある。
*向・・・・・~で。習慣的に「むかう」と読んでいるが、方向を示す用法ではなく「在」と同じく場所を表す前置詞。詩にはよく用いられる。

通釈

川辺の柳が、麹にひく糸のように細やかな黄緑色の若芽が萌え出でている。馬を止め、あなたにその一枝を折っていただきましょう。
春風が柳の枝との別れを惜しむかのように、あなたの手の中にある小枝にまで優しく吹い てくるではないか。

参考

古来より中国では、送別の際に楊柳の枝を取って輪をつくり、旅立つ友へ贈る習慣があっ た。もっともこの詩が、実際に別離の場面で詠じられたかというと、どうもそうではない ような気がする。送別詩の絶唱である王維「元二の安西に使いするを送る」のような、旅 中の無事を切に 祈って友を送り出す際の、情感の高まりが見られないからである。むしろこれは、手折った柳の小枝に春風が香るという表現上の機知を楽しむために、「別離の場面を仮想して作った詩」と見たほうがよいようだ。送られる友人(あなた)に頼んで、柳の一枝を折らせるところなどがおもしろい。

 

範吟

範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)