竹里館(天 176)

吟譜(PDF)

作者:王 維

(七〇一~七六一年)盛唐の詩人。字は摩詰(まきつ)。山西省太原(たいげん)の人。七三一年の進士。弟縉(しん)と共に幼少より俊才、官は尚書右丞(しょうしょゆうじょう)に至る。五十五歳の時安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇し、賊にとらえられ偽官の罪を得たがのち赦される。 晩年もう川(もうせん)に隠棲し、兄弟共に仏門に帰依(きえ)する。また画の名手にして南宗画(なんしょうが 文人画)の祖となる。

語釈

*竹里館・・・・王維の別荘。もう川荘(もうせんしょう)の中の名所の一つ。
*幽篁・・・・・奥深く静かな竹やぶ
*長嘯・・・・・口をすぼめ声を長く引いて詩をうたう、一種の声楽。
*相照らす・・・心の相通ずる意。

通釈

私はただ独り、奥深く静かな竹薮の中の館に坐(すわ)り、琴を弾いたり、詩歌を長吟したりして過ごしている。 奥深い林のことだから誰も知らないであろう。ただ明月だけがこの林の奥まで光をさしこんで私を照らしてくれる。

参考

もう川荘・・・・・・陝西省藍田(らんでん)県西南二十里の藍田山の麓にある初唐の宮廷詩人宋之問(そうしもん)の別荘であった。のち王維が購入して生活の安息と経済的目的をはかった。二十里に及んで景観を呈し応に桃源郷そのものであった。

「孟城拗(もうじょうよう)・華子岡(かしこう)・文杏館(ぶんきょうかん)・斤竹嶺(きんちくれい)・鹿柴(ろくさい)・木蘭柴(もくらんさい)・茱萸沂(しゅしへん)・宮槐陌(きゅうかいはく)・臨湖亭(りんこてい)・南だ(なんだ)・欹湖(いこ)・柳浪(りゅうろう)・樂家瀬(らんからい)・金屑泉(きんしょうせん)・白石灘(はくせきたん)・北だ(ほくだ)・辛夷塢(しんいう)・漆園(しつえん)・椒園(しょうえん)・竹里館の計二十の名勝があった。

範吟

素読・範吟 鈴木精成