京に入る使いに逢う(続天 75)

吟譜(PDF)

作者:岑參

(七一五~七七〇年)・盛唐の詩人。河南省南陽の出身。安西節度使に仕え、当時、西の地の涯までいった。ために、辺塞詩をよくする。詩人・高適と並び称される。七四四年の進士。長く節度使の幕僚として西域にあったが、安禄山の乱があった七五七年に粛宗がいた鳳翔にはせ参じて、杜甫らの推挙により右補闕となり、その十月には粛宗に従って長安に赴く。七五九年に虢州の刺史となり、七六二年に太子中充・殿中侍御史となり関西節度判官を兼ね、七六五年に嘉州の刺史となった。七六八年、官を辞して故郷に帰ろうとしたが途中で反乱軍に阻まれて成都にとどまり、その地で没する。享年五十六歳。

語釈

*故園・・・生まれ故郷。ふるさと。
*漫漫・・・ひろい。水の果てしなく広いこと。
*雙袖・・・両袖。
*龍鐘・・・年老いて疲れ病むさま。失意のさま。涙を流すさま。
*紙筆・・・紙や筆といった筆記用具。
*傳語・・・伝言する。言伝(ことづて)する。
*平安・・・無事。

通釈

『中華の地を離れた西の方で唐のみやこ・長安への使いに出逢った』。

故郷の東の方を見れば、路が遥か限りなく長々と続いており。両方の袖は、失意で、涙の乾くことがない。馬に乗って出かけている時に「入京使」に出くわしたものの、筆記用具を持ち合わせていなかったので。あなた(=「入京使」)に「無事だ」との知らせの言伝(ことづて)をたのみたい。