山房の夜雨(続天 94)

吟譜(PDF)

作者:木下犀潭

(一八〇五~一八六七年)(文化二年~慶応三年)日本の武士・儒学者・熊本藩士。名を業広(なりひろ)、通称宇太郎(うたろう)、後に真太郎(しんたろう)、字は子勤(しきん)、号は犀潭(さいたん)、韡村(いそん)肥後国菊池郡の農家に生まれる。天保六年(一八三五)に昌平黌、また佐藤塾にて佐藤一斎に学ぶ。同じ熊本生まれで農民出身である松崎慊堂にも教えを受ける。ここで塩谷宕陰、安井息軒と知り合い、終生の親交を結ぶ。六十二歳没

語釈

*山房・・・・・・・・・山中の庵室。
*瑟瑟(しつしつ)・・・さびしげに冷たく吹く風の音の形容。
*虚窗(きょそう)・・・人けのない部屋の窓
*化(か)して・・・・・形や性質が変わって別のものとなる。かわる。変化する。

通釈

落葉秋風に舞って、風の音も寂しく、窓の前には唯一灯のあかりがあるのみ。
功名を争う人間の欲望も、天地寂寥の大自然の間に在りては、夜雨の声と共に去ってしまう。

備考

〇夜雨心に沈みて人間の煩悩を洗うと、山中の静かなる庵室にて感慨を述べたもの。