山路楓を観る(続天 96)

吟譜(PDF)

作者:夏目漱石

(一八六七~一九一六年)(慶応三年~大正五年)明治期の小説家。東京出身。名は金之助。東大英文科卒。松山中学教諭、五高教授を経て、イギリスに留学、帰国後一高教授。『明暗』では、自我を越えた所謂「則天去私」の世界を志向した。

語釈

*山路観楓・・・(雨後の)山道で、かえで(の紅葉)を観賞した。
*石苔・・・・・石の上に生えたこけを言う。
*沐雨・・・・・雨で髪を洗うこと。ここでは苔を髪にたとえ、苔が雨にぬれているさまをいう。
*難攀・・・・・よじのぼりにくい
*渡水・・・・・川を渡る。
*穿林・・・・・林を通り抜ける意。
*処処・・・・・ここかしこ。あちらこちら。方々。
*白雲・・・・・白い雲。俗世間を超越し たことを暗示する語でもある。

通釈

石の上に生えたこけを雨が洗い、(そのため)滑って登りにくく。川を渡り、林を通り抜けて、行って、また帰ってきた。
方々で鹿の鳴き声がするが、(姿は)見付けられなくて。白い雲に紅葉が、山々に満ちている。
いもみじが山々に満ちている