山中の春暁鳥声を聞く(続天 106)

吟譜(PDF)

作者:高啓

(一三三六~一三七四年)中国,明初の詩人。長州 (江蘇省呉県) の人。字,季迪 (きてき) 。号,青邱。元末には張士誠の高官饒介 (ぎょうかい) の庇護を受けたが,仕えず淞江の青邱に隠棲した。一八六九年、明の太祖に召されて『元史』の編纂に参加,翌年戸部侍郎に抜擢されたが固辞して帰郷。のち,蘇州に拠って明に最後まで抵抗した張士誠につながる文人を憎む太祖の捏造した事件に連座して,腰斬の刑に処せられた。詩文ともにすぐれているが,特に詩は明代を通じて第一ともいわれ,建安から盛唐までを宗とした明るく平易な詩風で,日本でも江戸時代,明治期を通じて広く愛読された。楊基,張羽,徐賁 (じょひ) とともに,「高楊張徐」とも「呉中の四傑」とも称される。作品は『高太史大全集』に収められている。

通釈

詩文説明

声を聴くというのだから、唐の孟浩然「春暁」詩の「処処啼鳥を聞く」というのとは異なる。聞く、は自然にきこえて来のであり、聴く、は耳を傾けてきくのである。・・・(中略)・・・山はがらんとして人もまだ寝静まる中で、鳴き声はいっそう鋭くひびく。月は杏(あんず)の花かげに沈んだが、空はまだ明けやらぬ。 ほとんど解説を要しない表現の平易さ、それはこの詩人の詩の特徴の一つだが、その平易な表現の中に、まだ明けやらぬ山中の春を写してたくみである。