自画に題す(続天 118)

吟譜(PDF)

作者:夏目漱石

(一八六七~一九一六年)(慶応三年~大正五年)英文学者、小説家、名は金之助、江戸牛込の生まれ、明治二十二年漢詩文集「木屑録」から漱石と号す。松山中学、第五高校教師を経て英国留学。帰国後、一高教授・東大講師を勤め、その間、華々しい文学活動を展開した。

語釈

*自画に題す・・・ 自分の画いた画の余白に詩を書きつけること。(この詩は竹と蘭を描いた絵に書きつけたもの)。
*幽居・・・・・・世をさけた隠者の住まい。
*独座・・・・・・ただ一人で座る。
*寛(ゆる)き・・・ゆるい。

通釈

世をさけた静かなこの住まいには人の訪れることもなく、只一人座っていると、病のやつれから着物のゆるやかなのが分かって淋しい。

この事からゆくりなくも私は、春風恨みをひく—–という言葉の意味を理解し得たが、春風よ遠慮はいらない、吹き来たって私が画いた 竹と蘭に春を与えよ‼

範吟

範吟 鈴木精成