湘南即事(続天 131)

吟譜(PDF)

作者:戴 叔倫

(七三二~七八九年)中国・唐の詩人。字は幼公(ようこう)、または次公(じこう)。潤州金壇(江蘇省)の出身。

安史の乱の兵乱を避けて波陽(江西省)に移住し、もっぱら学問に励み、蕭穎士の門下に入って随一と謳われた。八〇〇年、進士に及第、杭 州新城県(浙江省富陽)の令などを務め、真面目な勤務ぶりを認められて、撫州(江西省臨川)刺史・容州(広西壮族自治区容県)刺史兼本管経略使を歴任、善政を敷いて住民に慕われた。のちには辞職して道士となったが、間もなく死んだ。今、『戴叔倫』二巻が残っている

語釈

*湘南即事・・・湘南(現・湖南省湘潭県の西)地方の様子を詠じた詩。
*盧橘・・・・・金柑(きんかん)の別名。また、枇杷(びわ)の別名。
*衰・・・・・・木の葉や髪の毛のように一つまた一つと、落ちて老いおとろえてゆく。
*京師・・・・・天子のみやこ。帝都。
*沅湘・・・・・沅(げん)江と湘(しょう)江。共に湖南省を流れて洞庭湖に注ぐ川の名。
*愁人・・・・・悩みのある人。物の哀れを感ずる人。詩人。ここでは作者を謂う。

通釈

金柑(きんかん)花が開いて、カエデの葉が一つまた一つと散っていき。町の城門を出た郊外では、どちらの方に都を眺め(られ)るのか。

沅(げん)江と湘(しょう)江は、昼となく夜となく東に向かって流れて。物の哀れを感ずる詩人(作者)のためには、暫くも止(とど)まってはくれない。

範吟

素読・範吟 鈴木精成