春日偶作(続天 138)

吟譜(PDF)

作者:武元衡

(七五八~八一五年)は、中国・唐の詩人。河南緱氏(こうし、河南省偃師の南)の出身。字は伯蒼。
徳宗の七八三年の進士。徳宗に才能を認められ、比部員外郎・右司郎中・御史中丞を歴任。順宗朝では権臣・王叔文に従わなかった為、降 職されたが、憲宗の八〇七年には門下侍郎・同中書門下平章事(宰相)に至った。同年、宰相のまま剣南西河節度使に任ぜられて蜀に赴き、七年間、蜀に滞在した。淮西節度使(河南省汝南)・呉元済が反乱を起こした時、憲宗から全てを委任されて討伐を画策したが、呉元済派の朝臣の放った刺客に暗殺された。『武元衡集』三巻がある。

語釈

*寂寂・・・もの寂しく。
*衡門・・・あばら屋。
*惆悵・・・憂い悲しむ。恨み嘆く。落胆する。

通釈

散る花はもの寂しく燕はつがいで飛ぶ、南方に客人として住むあばら屋は楚の川に面している。

悲しくてならぬ笛や琴の音はどこで演奏しているのか、春の風はその音を本を読むわが窓に吹き届けている。

備考

どんな気持ちで春日に対しているのか。作者の心境に注目。作者は南客で衡門に住み、惆悵している。客は古里を離れた人を言うので、作者は古里を離れ、南方にいる。その地は楚。住んでいる家はあばら屋。粗末な小屋です。惆悵の意味は、憂い悲しむ。恨み嘆く。落胆する。惆悵する原因は何でしょうか。古里を離れ、南方の楚にいること。原因はここにあるのかもしれない。そんな折、作者は窓辺で読書している。そこへ春風に乗って、にぎやかな音楽の音色。どんな心境でその音色を聞いたのでしょうか。

範吟

範吟 鈴木精成