小園(続天 143)

吟譜(PDF)

作者:陸 游

(一一二五~一二一〇年)、南宋の政治家・詩人。字は務観。号は放翁。通常は「陸放翁」の名で呼ばれる。越州山陰(現在の浙江省紹興市)出身。南宋の代表的詩人で、范成大・尤袤・楊万里とともに南宋四大家のひとり。とくに范成大とは「范陸」と並称された。現存する詩は約九二〇〇首を数える。その詩風には、愛国的な詩と閑適の日々を詠じた詩の二つの側面がある。強硬な対金主戦論者であり、それを直言するので官界では不遇であったが、そのことが独特の詩風を生んだ。

語釈

*村南村北・・・村のあちこちで。村中で。
*鴣・・・・・・〔ぼっこ〕鳩の一種。スズカゲバト。カノコバト。
*新秧・・・・・植えたての苗。
*漫漫・・・・・水流の広いさま。
*遍・・・・・・行き渡る。あまねし。
*天涯・・・・・故郷を遠く離れたきわめて遠いところ。異郷。天のはて。地の涯。
*千萬里・・・・長大な道程を謂う。
*春耕・・・・・春の農作業の支度。春に農作物を植える準備のために田畑を耕すこと。

通釈

村のあちこちでスズカゲバトの鳴き声が聞こえる春の季節となった。水には、植えたての苗が突き出て、水面が広々と平らかに広がっている。志を高く持って故郷を遠く離れた地の涯までも、遥かな旅をして遍く旅をしたものだったが、しかしながら今では過去とは反対に、となりの農家の親父さんから春の農耕の手ほどきを受けているようになった。

範吟

範吟 鈴木精成