暑を山園に避く(続天 147)

吟譜(PDF)

作者:王世貞

(一五二六~一五九〇年)中国、明(みん)中期の文人。字(あざな)は元美。号は鳳洲(ほうしゅう)または州(えんしゅう)山人。太倉(たいそう)(江蘇(こうそ)省)の人。一五四七年の進士。官は南京(ナンキン)刑部尚書に至った。李攀竜(りはんりゅう)とともに後七子(ごしちし)の領袖(りょうしゅう)として、何景明(かけいめい)、李夢陽(りぼうよう)ら前七子(ぜんしちし)の復古運動を継承し、万暦年間(一五七三~一六二〇)の前半、詩壇に君臨した。「文は前漢、詩は盛唐」と主張し、中唐以後の書物は読むなと禁じたほどであったが、晩年には白居易(はくきょい)や蘇軾(そしょく)を愛し、格調を重んじて装飾的であったその詩文は、しだいに平淡に赴いた。

門人は天下に満ち、復古派の勢威は絶頂に達したが、彼らの詩文の模擬はやがて剽窃(ひょうせつ)へと堕落し、衰退の兆候を帯び始める。

彼はきわめて博学で、その領域も文芸のみならず経学や史学にわたり、著は『州山人四部稿』、同『続稿』、『芸苑巵言(げいえんしげん)』など三十種に及ぶ。

語釈

*残杯・・・残った酒。
*樹頭・・・梢。
*半池・・・池の半分。
*零雨・・・パラパラと降る残り雨。

通釈

飲み残した酒を持ち、涼を求めて水辺の部屋に席を移したが、ムッとするような暑気に襲われ、折角の酔いも忽ち醒めてしまった。

そんな中にあって一番嬉しいのは、突然の夕立が去って梢に吹く風も治まった後に、池の半分にパラパラと残り雨が降り注ぎ、あとの半分には星影が映っている一瞬の景だ。