探梅(続天 172)

吟譜(PDF)

作者:楊万里

(一一二七~一二〇六年)中国、南宋の政治家、文学者。字は廷秀、号は誠斎。江西省吉水の人。一一五四年の進士に合格後、北方の金朝に対する抗戦派の官僚として活躍。孝宗に朱熹(しゆき)(子)を推薦したように、硬骨の儒学者の一面も持つ。彼の詩は、俗語を大胆に摂取した軽妙な表現と意表をつく発想に特色がある。蠅や雀など小動物への感動や子供たちを案ずる気持を述べた作品は、日本の俳人一茶の世界に似通い、味わい深いものが多い。現存する詩約四二〇〇首は、宋代で陸游に次いで多作。

語釈

*探梅・・・梅を探す。
*幽歩・・・人知れず散歩すること。
*奇・・・・めずらしい。

通釈

やまあいを人知れず散歩すると、その眺めはすばらしく一言では言い表せない程である。それは丁度、この真冬の夕暮れ時で、とりわけ私が心をひかれるときである。一本の梅の木にたった一枝だけ花が咲いていた。しかし、それがいちばん高い枝に咲いているので、一層私を悩ませるのである。

備考

まだ冬のうちに早咲きの梅を野山に探すことを「探梅」といいます。これを冬の季語としたのは芭蕉である。