早に深川を発す(続天 176)

吟譜(PDF)

作者:平野金華

(一六八八~一七三二年)(貞享五年~享保十七年)江戸時代の儒者。名は玄仲(または玄中、玄沖)字は子和、通称源右衛門、幼少に父母を失い親族に養われる。江戸に出て医学を志すが、文学にも断ちがたく荻生徂徠に師事する。常陸(茨城県)の守山侯に仕えたが棒禄は少なく、或時、主君にまみえる者は新衣を付けよと命ぜられるも妻の衣を着て伺候し咎められ「薄棒で新衣を作ることが出来ず、幸いに妻がやや良いものを持っていたので着用したことを述べると、侯は即日加棒したという。享保十七年病没。享年四十五歳.

語釈

*人煙・・・人家のかまどから立つ煙。人家。
*曙色・・・夜明けの空の色。
*一半・・・二分けした片方。
*星文・・・星空の模様。
*総州・・・上総と下総の二国。

通釈

月は西に沈み、明らみ始めた東の空に人家の煙がくっきりと線を引いて立ちのぼり、永代橋は空の模様を東と西に分けている。
深川の水は天に向かって流れ下っているが、真っ直ぐに総州に向かって、やがて白雲となることだろう。

備考

早朝深川を発し、永代橋付近の朝景色を詠んだ詩。墨水三絶の一つである。