洞庭湖に遊ぶ(続天 182)

吟譜(PDF)

作者:李 白

(七〇一~七六二年)盛唐の詩人、杜甫と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県青蓮郷(きんしゅうしょうめいけん せいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。 幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒と交わる。長じて中国各地を遍歴し、四十二歳より 四十四歳まで玄宗(げんそう)皇帝の側近にあり、後再び各地を転転とし多くの詩をのこす。 安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。六十二歳、病のために没す。

語釈

*洞庭湖・・・揚子江中流の南方にある中国第一の湖水。この大湖の景色は雄大を極めとうてい文書や言葉では表すことはできない。
*長沙・・・・洞庭湖の東南にある旧市。
*湘君・・・・伝説によると有史前の帝王 堯(ぎょう)の娘をいう。 姉を娥皇 (がこう) 妹を女英(じょえい)といい共に舜(しゅん)に嫁(か)し 舜が蒼梧(そうご)で没すると二妃ともに湘水に身を 投じたという。また、娥皇を湘君、女英を湘夫人ともいう 一説に湘君を湘水の神とされる。

通釈

洞庭湖から西方を望めば、楚江(そこう)が分流して湖に入っている。湖水がつきるところ(水平線)、 南の空には一点の雲もなく、晴れ渡っている。やがて夕日は落ちて長沙の方は、秋に色づいた樹木が遠く見えている。ただ広々として、悲劇の女神 である湘君をどこで弔ってよいかわからない。

範吟

範吟 鈴木精成