夏の川(続天 187)

吟譜(PDF)

作者:江村北海

(一七一三~一七八八年)(正徳三年~天明八年)・江戸中期の漢詩人。京都の人。名は綬,字は君錫,通称は伝左衛門,
北海は号。儒者伊藤竜洲の次男に生まれ,京都の儒家の名門であった江村家の養子となった。兄の伊藤錦里,弟の清田儋叟(せいだたんそう)とともに学者三兄弟として知られる。伊藤家も江村家も家学は朱子学であったが,朱子学を強く宣布するという家風ではなく,北海も養父のあとをついで美濃郡上藩の儒官にはなったが,その活動は儒学よりも漢詩文に傾斜していた。それも詩文の実作にすぐれた才能を示したわけではなく,家塾の賜杖堂(しじようどう)において多くの門人に詩文を教授し,また上代から当代までの漢詩史《日本詩史》(一七七一年)を著し,当時の人々の漢詩を広く採集した《日本詩選》(一七七四年)を編纂するなどの,啓蒙・著述の活動に本領があり,上方に漢詩文が普及するうえで大きな役割を果たした。

通釈

川面にたちこめたかすみや靄は碧い紗を重ねたよう。南風がそよと吹き、水面に小波を斜めに立てる。夕日がようやく隠れて螢が乱れ飛ぶのは、  かえって春の川が散る花びらがを浮かべて流れているのよりも勝っている。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)