名古屋城(続天 189)

吟譜(PDF)

作者:松口月城

(一八八七~一九八一年)(明治二十年~昭和五十六年)。名は栄太。月城と号す。福岡市に生まれる。幼少より秀才の誉れ高く、熊本医学専門学校を卒業。十八歳にして卒業して医者となり、世人を驚かせた。当時、久留米出身で熊本に住んでいた詩壇の重鎮・宮崎来城に漢詩を学び、以来この道を極め福岡に「月城吟社」を経営し、現代詩壇の雄として活躍、書画にも秀でていた。昭和五十六年九十五歳で没。「月城詩集」がある。我が「岳精会会詩」の作詩者でもある。

語釈

*名古屋城・・・徳川家康が西南諸大名に命じて慶長十五年(一六一〇)に着工し、同十七年に完成。尾張徳川家の居城で、天守閣は加藤清正が造営、閣上には金の鯱が飾ってある。第二次大戦中、昭和二十年戦火に遭い、本丸御殿の障壁画などを除き大半を焼失。昭和三十四年に再建され、大天守・小天守ともに復元された。
*金麟・・・・・金で造った鱗、金鯱。
*燦爛・・・・・キラキラ光り輝くさま。
*高甍・・・・・高いいらか、高い瓦屋寝。
*登臨・・・・・高いところに登って下を見渡すこと。
*秀立・・・・・きわだって抜きん出ている。
*金湯・・・・・「金城湯池」の略で、金で造ったような堅固な城と、煮えたぎる湯をたたえて人の近寄れない池。堅固な備え。

通釈

金の鯱鉾が高い瓦屋根の上で燦爛と輝いている名古屋城に、今日登って下界を見渡すと、何とも云えない壮大な気分が胸中に湧き起る。天守閣はまるで雲を衝かんばかりに聳え立ち、堅固な備えをする名古屋城は実に立派な城である。

鑑賞

金の鯱鉾と天守閣を誇る名古屋城は、天下の名城として名高い。別名金鯱城・金城ともいわれる。作者は、この名城に登城してみて、その眺めにあらためて驚き感嘆したものであろう。承句「今日登臨無限の情」は、その感激を端的に表現している。