新涼書を読む(天 143)

吟譜(PDF)

作者:菊池三溪

(一八一九~一八九一年)(文政二年~明治二十四年)、幕末・明治の儒者、名は純(じゅん)、字は子顕(しけん)、通称純太郎、三溪は号。紀伊(和歌山県)の人、紀州藩に仕え、 江戸赤坂邸の明倫館教授となる。後将軍家茂(いえもち)の侍講となり、晩年京都に住む。詩文に巧みにして戯文(ぎぶん)に名あり。明治二十四年十月、七十三才で没す。著書に国史略(こくしりゃく)三編、近事紀略(きんじきりゃく)、本朝虞書新誌(ほんちょうぐしょしんし)、晴雪桜詩鈔(せいせつろうししょう)、三溪文鈔(ぶんしょう)等がある。

語釈

*郊墟・・・郊外の野。
*半簾・・・半分おろした簾(すだれ)
*絡緯・・・ くつわむし。 はたおりむし。 こおろぎ。

通釈

秋の気配はすでに青桐の葉が落ちはじめる時感じられ、新涼の候はすでに郊外の野に忍びよっている。
水のように澄み切った月の光は中天から斜めに簾の半分を照らしている。まさに灯火親しむの候、静かなたたずまいの中に 鳴く虫の音を聞きながら書を読むことは最高の楽しみである。

範吟

素読・範吟 鈴木精成