春初感を書す(天 146)

吟譜(PDF)

作者:安積 艮斎

(一七九一~一八六一年)(寛政三年~万延元年)、幕末の朱子学者。江戸で私塾を開き、岩崎弥太郎、小栗忠順、栗本鋤雲、清河八郎らが学んだ他、吉田松陰にも影響を与えたとされる。陸奥(後の岩代)二本松藩の郡山(福島県郡山市)にある安積国造神社の第五十五代宮司の安藤親重の三男として生まれる。名は重信、字は子順(しじゅん)、別号は見山楼。十七歳で江戸に出て佐藤一斎、林述らに学ぶ。一八一四年、江戸の神田駿河台に私塾「見山楼」を開く。一八五〇年には昌平黌教授となり、ペリー来航時のアメリカ国書翻訳や、プチャーチンが持参したロシア国書の返書起草などに携わる。また、幕府へ外交意見として『盪蛮彙議』を提出した。

没する七日前まで講義を行っていたと伝えられる。

語釈

*野梅・・・・・・・・・・野原の梅。
*渓柳・・・・・・・・・・渓谷の柳。
*朝衣を把(と)って・・・私服を官服に換える。仕官する事
*春宴・・・・・・・・・・正月の宴会

通釈

◎春の初めに普段からの感想を詠ったもの。
野原の梅や渓谷の柳などを鑑賞しながらのんびりと暮らそうと思っていたのに、主君の命により武士となった。
宮仕えはつらいもので、灯りも薄暗くなり宴会も終わって、城外一面風雪が舞う中をやっと夜更けに帰ることができた。