蘇台覧古(天 163)

吟譜(PDF)

作者:李 白

(七〇一~七六二年)盛唐の詩人、杜甫(とほ)と並び称される。蜀(しょく)の錦州彰明県(きんしゅうしょうめいけん) 青蓮郷(せいれんきょう)の人で青蓮居士(せいれんこじ)と号した。幼にして俊才、剣術を習い任侠の徒 と交わる。長じて中国各地を遍歴し、四十二歳より四十四歳まで玄宗(げんそう)皇帝の側近にあり、後再び各 地を転転とし多くの詩をのこす。安禄山(あんろくざん)の乱に遭遇して、罪を得たがのち赦される。六十二歳、 病のために没す。

語釈

*蘇臺・・・・呉王闔廬(こうりょ)と夫差(ふさ)が姑蘇山に建てた宮殿のあと。今の江蘇省蘇州市西南 霊岩山寺がその跡とされる。
*覽古・・・・懐古に同じ
*菱歌・・・・菱(ひし)の実採りの民歌
*宮裏人・・・呉王夫差の宮中にあった美女の西施(せいし) 夫差は越王から奪った 西施の美しさに溺れて政治をかえりみず、亡国を招いた。

通釈

呉王の姑蘇臺は古びた庭園や荒れた高台になってしまったが、そのなかで楊柳だけが今年も新しい芽をふいた。 水面(みずも)をわたる(ひしと)りの乙女らの清らかな声を聞けば、やるせない春愁(しゅんしゅう)に たえられない。 春を謳歌した呉王の宮殿(蘇台)には、只今は西に流れる川を月が照らしているばかりである。曽(かつ)て は呉王の宮殿の美女(西施)の姿を照らしていたものだが・・・。

範吟

素読・範吟 鈴木精成