長城(天 175)

吟譜(PDF)

作者:王遵

生没年不明 晩唐の詩人。年少の頃より地方の小吏となったが、後役人をやめ科挙に応じて進士に及第した。小吏の時代は、書物も借りなければならない程の貧乏であったが、刻苦精励して人が気がつかないうちに博学多識の人となっていた。王遵は特に絶句に長けていて、ほとんど詠史諷世を主題としたものである。

語釈

*長城・・・・・万里の長城。秦の始皇帝が匈奴の侵入を防ぐために築いたもの。
*鉄牢・・・・・鉄製の牢屋。
*蕃戎・・・・・野蛮な異民族。匈奴。
*臨洮・・・・・地名。現在の甘粛省岷県。秦の長城は西の起点がこの臨洮であった。
*逼・・・・・・近づかず。
*焉知・・・・・しかしながら。だが。
*連雲勢・・・・雲に連なるほどの勢い。
*不及・・・・・及ばない。
*堯階三尺・・・堯の宮殿の階段は三尺しかなかった。質素なこと。

通釈

秦の始皇帝が築いた万里の長城は鉄の牢獄に比べるほど堅かった。それだから、匈奴も臨洮にまで近づくことはなかった。だが、万里も連なって雲に接するほどの勢いの長城も、あの古代聖王堯の宮殿の階段の三尺の高さに及ばないとは誰が知ろう。