長安主人の壁に題す(天 179)

吟譜(PDF)

作者:張 謂

(七二一~七八〇)、盛唐の詩人。字は正言(せいげん)、河南省沁陽(しんよう)県の人。天宝二年の進士、大暦中に礼部侍郎(じろう)になり、のち潭州刺史(たんしょうしし)に左遷さる。

語釈

*然諾・・・・よろしいと引受けること
*悠悠・・・・遙かにへだたるかたち ここでは疎遠で無関心の態度をいう。
*行路心・・・道を行く通りすがりの人が互いに無関心のような気持をいう。

通釈

世間の人は友人と交際するのにも金の力をかりている。金を多く使わないと付き合いも一向に深くならない。 たとい一時はよし引受けたと心を許してつき合ってくれても、こちらが貧乏になってくるといつの間にか行きずりの人のように冷たく 疎遠になってしまうのである。

備考

作者が進士の試験を受けるため長安に出てきた時、今日世人の人情の軽薄なことを諷刺した詩である、張謂二十三歳の時、 宿屋の壁に書きつけたもの、杜甫の貧交行の詩に一脈相通ずるところがある。