江上の舟(続天 77)

吟譜(PDF)

作者:嵯峨天皇

(七八六~八四二年) 第五二代の天皇。平安朝初期の漢詩人で書家。御名(ぎょめい)は神野(かみの)、第50代桓武(かんむ)天皇の第二皇子として降誕された。 幼時より聡明で読書を好み、博く経史(けいし)に通じ、詩文に長ぜれ、書芸にも精(くわ)しく、僧空海、橘逸勢(たちばなのはやなり) と共に三筆と称された。また仏道にも帰依(きえ)せられ東寺を空海に賜いて真言宗の根本道場とさせた。文化の興隆に 努められると共に諸式、諸官をも設けた。これによって平安朝の制度文物(法律、学問、芸術、宗教)は備わった。御歳(おんとし)二四歳で 即位され御在位十四年、皇位を淳和(じゅんな)天皇に譲られ、承和(じょうわ)九年七月十五日、五七歳で嵯峨院(今の大覚寺) で崩御された。御陵は嵯峨山上陵(さがのやまのえのみささぎ 京都市右京区)

語釈

*長江・・・ここでは淀川
*行船・・・水上を行く船
*漾・・・・水に浮かんだ船がゆれ動く
*風帆・・・風を受けてはらんだ帆
*虚無・・・なにもない ここでは大空
*仙査・・・仙人の乗ったいかだ

通釈

河陽(かや)離宮から眺めると淀川が遥か遠くまで続き、その広く豊かな水の流れに船がゆれ動きながら進んでいる。

風を受けてはらんだ帆船が大空に消えてゆく光景は、仙人の乗ったいかだが、天に上ってゆくのではないかと思われる。

範吟

範吟・指導 鈴木精成