三日李九の荘を尋ぬ(続天 103)

吟譜(PDF)

作者:常建

(じょう けん)は、中国・唐の詩人。長安の人と伝えられるが、詳細不明。七二七年の進士で、盱眙(くい、安徽省)の尉となったが、昇進が遅いのに不満を持ち、隠者の生活に憧れて、名山を歩き回った。あるとき山中で仙人のような女に会い、術を授かったと言われ、晩年は鄂渚(がくしょ、湖北省武漢市の西)に隠棲し、王昌齢らを招いて、自由な生活を送った。作品に、『宇文六(うぶんろく)を送る』(七言絶句)がある。

通釈

詩文説明

タイトルの「三日李九の荘を尋ぬ」は、三月三日に友人の李九の別荘を尋ねたという意味です。李九の李は苗字ですが九は名前ではなく李家の九番目の男子と言う意味です。一句目の「東渡頭」は東の渡し場の辺り、二句目の「永和三日」は三五三年三月三日のことで、王羲之たちが会稽、今の紹興酒でお馴染みの紹興の蘭亭で曲水の宴を開いた日と言われています。この日にちなんで、自分も舟で友達の李九を尋ねようと言っています。杯が自分の目の前に流れてくるまでに詩を作り発表するという水に関連した遊びです。やはり、出掛けるには水にちなんだ軽舟なんですね。中国語の「故人」は、亡くなった人ではなく昔からの友達のことで、タイトルにある李九です。後半の三句、四句は春の美しく輪郭がほわっとした景色が生き生きと目に浮かびます。柳の緑、桃の花、水の流れ、日本の春と相通じる情景です。詩の奥深くにあるもの、技巧などはありませんが、ぬるんできた水や空気を感じる春をよく表していると思います。