酒を勧む(続天 105)

吟譜(PDF)

作者:于武陵

(八一〇~?年)・中国・唐の詩人。杜曲(陝西省西安市の南郊)の出身。名は鄴(ぎょう)。武陵は字であるが、通常は字で呼ばれていた。宣宗の大中年間(835年頃)に進士となったが、官界の生活に望みを絶ち、書物と琴とを携えて天下を放浪し、時には易者となったこともある。洞庭湖付近の風物を愛し、定住したいと希望したが果たせず、嵩山(すうざん)の南に隠棲した。今、『于武陵集』一巻が残っている。作品に、『勧酒(かんしゅ)』(五言絶句)がある。井伏鱒二の訳詩集『厄除け詩集』に収録された訳詩が有名である。

語釈

*勸酒・・・・作者が友人と別れる時の餞別の宴とその時の詩。
*金屈卮・・・曲がったとっての附いた黄金の杯。
*卮・・・・・杯。さかづき。
*滿酌・・・・酒をなみなみと杯につぐ。いっぱいになった杯。
*辭・・・・・辞退する。遠慮する。断る。

通釈

あなたに、曲がった取っ手の附いた黄金の杯(にいっぱいにつがれたお酒)をお勧めする。杯にいっぱいにつがれた酒を、辞退しないでほしい。

花が咲けば、(咲いた花にとっての障碍となる)風や雨が多く襲ってくる。人が生きていくと、別離も多くある。

範吟

範吟 鈴木精成