辞世(続天 107)

吟譜(PDF)

作者:上杉謙信

(一五三〇~一五七八年)(享禄三年~天正六年)。戦国大名。、戦国時代の越後国(現在の新潟県上越市)の武将・戦国大名。後世、越後の虎や越後の龍、越後の獅子、軍神と称される。上杉家の下で越後国の守護代を務めた長尾氏出身で、初名の長尾 景虎(ながお かげとら)でもよく知られている。兄である晴景の養子となって長尾氏の家督を継いだ。のちに関東管領上杉憲政から山内上杉氏の家督を譲られるとともに「政」の一字を与えられて上杉 政虎(うえすぎ まさとら)と改名し、それまで上杉氏が世襲していた室町幕府の重職関東管領をも引き継いだ。後に室町幕府の将軍・足利義輝より偏諱(「輝」の一字)を受けて、最終的には上杉 輝虎(うえすぎ てるとら)と名乗った。謙信は、さらに後に称した法号である。内乱続きであった越後国を統一し、戦や政だけではなく、産業を振興して国を繁栄させた。他国から救援を要請されると秩序回復のために幾度となく出兵し、四十九年の生涯の中で武田信玄、北条氏康、織田信長、越中一向一揆、蘆名盛氏、能登畠山氏、佐野昌綱、神保長職、椎名康胤らと合戦を繰り広げた。特に五回に及んだとされる武田信玄との川中島の戦いは、後世たびたび物語として描かれており、よく知られている。さらに足利将軍家からの要請を受けて上洛を試み、越後国から北陸路を西進して越中国・能登国・加賀国へ勢力を拡大したが志半ばで死去した。

語釈

*一期・・・・・一生。
*榮華・・・・・権力を得て、はなやかに栄えること。
*一盃酒・・・・さかづきに一杯だけの酒。満ちているさま。非常にたくさんであるさま。
*四十九年・・・上杉謙信の一生。
*一睡夢・・・・人生は一眠りの夢である。人生のはかない喩え。

通釈

一生の華やかな繁栄も、さかずきに一杯だけの酒である。(一生の華やかな繁栄も、一夜の酒での酔いの中の幻のようなものである。酒は、二杯目はない)。四十九年の一生は、一眠りの(一度の)夢のようにはかないものである。

備考

豊臣秀吉の「露と落ち露に消えにしわが身かな難波のことも夢のまた夢」「露と落ち露と消えにし我が身かな浪速のことは夢のまた夢」「露と落ち露と消えぬる我が身かななにはのことは夢のまた夢」や織田信長が好んだという「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢まぼろしのごとくなり」等とも、その精神において通ずるものがある。