春寒(続天 111)

吟譜(PDF)

作者:大窪詩仏

(一七六七~一八三七年)(明和四年~天保八年)、江戸時代後期の漢詩人である。書画も能くした。常陸国久慈郡袋田村(現 茨城県久慈郡大子町)に生まれる。名は行(こう)、字は天民(てんみん)、通称を柳太郎、のちに行光、号は詩仏のほかに柳侘(りゅうたく),痩梅(そうばい)、江山翁(こうざんおう)、玉地樵者、艇棲主、含雪、縁雨亭主、柳庵、婁庵、詩聖堂(しせいどう)、江山書屋(こうざんしょや)、既醉亭(きすいてい)、痩梅庵(そうばいあん)とも号した。号の詩仏は唐詩人 杜甫が「詩名仏」と称されたことによるものか、あるいは清の袁枚の号に因むと言われる。

語釈

*春寒・・・春になっても残る寒さ。
*寒食・・・中国で、冬至の後一〇五日目の日は、風雨が激しいとして、火の使用を禁じて冷食した古俗(こぞく)。
*零落・・・草木の葉が枯れ落ちること。落ちぶれること。死ぬこと。
*杏花・・・あんずの花
*黄昏・・・夕暮れ。たそがれ。

通釈

寒食の時節まで幾日もない。 梅の花は散って、杏の花が咲き始めた春寒で雪雲が空をおおっているが雪を降らせる力はない。かえって、夕方になって雨になって来た。

範吟

範吟 鈴木精成

範吟 磯田精信

 

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