書懐(続天 114)

吟譜(PDF)

作者:篠原国幹

(一八三七〜一八七七)(天保七年~明治十年)は日本の武士(薩摩藩士)・陸軍軍人である。薩摩国鹿児島城下加治屋
町で篠原善兵衛の子として生まれる。諱(名)は国幹、通称は藤十郎、冬一郎という。少年時代に藩校・造士館に入って和漢学を修め、ついで藩校の句読師となり、長じてからも和漢の典籍を読むことを好んだ。剣術ははじめ薬丸兼義に薬丸自顕流を、次いで和田源太兵衛に常陸流を学ぶ。江戸に出て練兵館で神道無念流を学んだ。また馬術・鎗術・弓術も極め、文武両道を兼ねていた。一八六二年(文久二年)、有馬新七らと挙兵討幕を企てたが、島津久光の鎮圧にあって失敗した(寺田屋騒動)。薩英戦争で砲台守備に出陣。戊辰戦争のとき、薩摩藩の城下三番小隊の隊長となって鳥羽・伏見の戦いに参戦し、その後、東征軍に従って江戸に上った。上野の彰義隊を攻めたときは、正面の黒門口攻めを担当し、その陣頭に立っての指揮ぶりの勇猛さで世に知られた。この後、奥羽へ転戦した。

通釈

雨が降り霧も出て、さらに雲があるかの如く、あちこちで反政府の戦いが起き、入り乱れて収まりがつかなくなっている。いままさに、鍛え上げられた日本刀のようなくもり一つない兵を率い、東上して君側の奸を取り除き、天皇に拝謁して、われらの赤心を知っていただくのだ。

範吟

素読・範吟 鈴木精成