時事偶感(続天 116)

吟譜(PDF)

作者:杉浦重剛

(一八五五~一九二四年)(安政二年~大正十三年)明治大正時代に活躍した教育家。滋賀県出身。
一時期、政治家やジャーナリストにもなったが生涯の大半は、教育家として活躍し、晩年は天皇家の御進講に当たった。
その高潔な人格と卓越した識見からこの時代の師と仰がれた。七十歳で病没。

語釈

*昨・・・・昨日。
*非・・・・誤り・過ち。
*今・・・・今日。
*是・・・・正しい。
*何論・・・どうしようもない。論ずるまでもない。
*道義・・・守るべき人の道。
*三復・・・三回、何回も繰り返して。
*日月・・・太陽と月。

通釈

昨日まで非と言っていた者が、今日は是と言っている。こんな節操のない世の中ではどうしようもないではないか。
人は皆、道義の大切さを知っているはずなのに。こんな時こそ、古人の句を繰り返し吟ずべきである。太陽と月を天空に並び懸けてこの国を照らす。

鑑賞

起句の「昨非今是」は陶淵明の名詩「帰去来の辞」にある「今是昨非」をもじったもの。また、結句の「双懸日月照乾坤」は、李白の名詩「上皇西巡南京歌」の結句をそのまま引用、しかしその大胆な試みがこの詩を風格高いものにしているようです。