七歩の詩(続天 122)

吟譜(PDF)

作者:曹植

(一九二年~二三二年)。曹操の子で、曹丕の弟。詩人として有名で建安時代を代表する作家であり、「建安の傑」と称される。その才能によって、かつて父曹操より太子にされようとしたこともある。父の死後,曹丕らによって種々の迫害を受け、その思いをこの詩に託した。四十一歳の時、兄・曹丕の後を追うように、不幸な裡に世を去った。

語釈

*煮豆・・・豆を煮る。
*相・・・動作が対象に及ぶ時の表現。

通釈

豆と豆萁とは、本来同一の根から生えている、いわば身内だが、豆萁(豆がら)は燃えて豆を煮て来るので、豆は堪えかねてカマの中で泣いている本来は同じ根から生長した。豆萁が豆をにることにどうしてそんなに急くのか。

備考

七歩詩:『古文眞寶』や『古詩源』にある。『古文眞寶』のもの。『兄弟』詩である。兄弟仲、兄弟愛を提起する詩である。皇帝である兄・曹丕と作者・曹植とはともに曹操の息子で兄弟であるものの、才能をめぐり、仲が悪かった。兄・皇帝より才能や行動を疑われ、「七歩進むうちに詩を一首、作ってみせよ」と命じられ、曹植は七歩で「兩肉齊道行,頭上帶凹骨。相遇凹山下、起相突。二敵不倶剛,一肉臥土窟。非是力不如,盛氣不泄畢。」と作った。これが『七歩詩』である。するとさらに、「七歩で作るのでは遅すぎる。言われた声と同時に作れるか。『兄弟』という詩題だ。」曹植は即座に「煮豆燃豆,豆在釜中泣。本是同根生,相煎何太急!」(豆を煮るに豆(まめがら)を燃やせば,豆は釜中に在りて泣く。本 是れ同根に生ぜしに,相ひ煎(に)ること何ぞ太(はなは)だ急なる?)と口ずさんだ。これを聞いて曹丕は涙をこぼした。

範吟

範吟 鈴木精成