秋夜丘二十二員外に寄す(続天 132)

吟譜(PDF)

作者:韋 応物

(七三六~七九一年?)、中国・唐(中唐)の詩人。京兆府長安県(陝西省西安市)出身。北周朝からの名門の家に生まれ、若い頃は太学に学んだ。玄宗に近衛士官(三衛郎)として仕えた。玄宗のおぼえはめでたかったものの、強気なところがあった。安史の乱の後、職を失ったため故郷に帰って貧窮した。そこで心を入れ替えて勉学に励んだ。その後、下級の地方官を転々とした。洛陽県丞のとき軍兵が不正をはたらくのを厳しく取り締まった。それからは病気を理由に辞任したり滁州(安徽省)刺史になったりと、官途に就いたり辞めたりを繰り返した。七八六年には蘇州刺史になった。そして白居易が赴任してくると引退し、寺院に寓居した。その最期は判然としないが、大和年間(八二七~八三五年)まで生存していて、劉禹錫によって官に推薦されたというが確証はない。自然を詠う詩に巧みで、とくに自然の静けさや穏やかさを主題とする物に秀でている。盛唐の孟浩然や王維を受け継ぐとされ、柳宗元も一括して“王孟韋柳”と並称される。『韋蘇州集』十巻が伝わる。作品には『幽居』(五言古詩)、『聞雁(雁を聞く)』(五言絶句)等がある。

語釈

*寄・・・・・手紙で届ける。手紙で送る。
*丘・・・・・名は丹。蘇州の人。
*二十二・・・排行で、(男兄弟の)二十二番目。二十二男。(大家族制である)
*員外・・・・補佐役。定員以外に補任された官。
*屬・・・・・ちょうどいま。おりしも。たったいま。いましたばかり。まさに。たまたま。

通釈

秋の夜に、丘家の二十二男である員外郎の丘丹に手紙と詩を出した。あなたを懐かしく思い出しているのは、おりしもちょうど秋の夜であり。すずしい秋の夜をそぞろ歩きをして詩をうたったりした。松笠の落ちる音がよく響くが。 人里離れて静かに暮らしているあなたのところでも、松笠の落ちる音がよくしておそらく、まだ寝られないでいることだろう。