春雁(続天 146)

吟譜(PDF)

作者:王恭

(? – 三九八年)明代の人。東晋の武将・政治家。字は安中。皆山樵者と自ら号す。閩県((現・福建省)の人。六十余歳のとき、『永樂大典』を修めるのに参与する。父は王蘊。子は王曇亨と王愔之ら。東晋の孝武帝の皇后王法慧の兄であり、東晋皇室の外戚であった。このため孝武帝の時代に著作郎・前将軍・鎮北将軍・兗青二州刺史など要職に任命され、三八八年に謝玄が没した後には北府軍の総帥となり、京口に鎮した。

語釈

*春雁・・・・・・春になって北方に帰る帰雁のこと。
*衡陽・・・・・・地名で雁の南下する先の地とされたところ
*楚水燕山・・・・南方の川(回雁峰の北側の湘江)と北方の(古巣の)山
*長し・・・・・・距離が遠い
*怪しむ莫れ・・・を疑わない
*便ち・・・・・・すぐに
*江南・・・・・・長江下流の南の地方で、蘇州、無錫、杭州といった、文化的に成熟し、経済的に発達した一帯を指す

通釈

春風が、ある夜、雁の越冬地である衡陽に辿り着いた。南方の川((回雁峰の北側の湘江)と北方(古巣)の山とは、非常に距離が遠い。それにもかかわらず、春が来れば、雁はすぐに、帰っていくのを不思議に思わないでほしい。というのは、長江下流の江南は、すばらしいとはいうものの、異郷である(のだから。