先妣十七回忌(続天 153)

吟譜(PDF)

作者:菅茶山

(一七四八~一八二七年)(延享五年~文政十年)。江戸時代後期の儒者。備後神辺(かんなべ)の人。私塾「黄葉夕陽村舎」(後の廉塾)を開いて、 姓は菅波、名は晉師(ときのり)、字は礼卿、通称は太仲。号して茶山。備後の人。詩集に『黄葉夕陽村舎詩集』などがある。塾名や、詩集名は、菅茶山が好んで朝夕眺めていた山の名に因り、廉塾の南1キロメートルほどのところにある。

語釈

*旧夢・・・過ぎ去った昔。
*茫茫・・・遥かなさま。ぼんやりとしてはっきりとしないさま。果てしなく広々としているさま。
*芳辰・・・よい時節。多く、春の季節を謂う。
*墳前・・・(土を盛り上げた)墓の前。
*稽顙・・・坐って頭を地面に暫くの間、つけている礼。叩頭の礼。喪に服する者の礼を特に謂う。
*懐中・・・ふところの中。

通釈

過ぎ去った昔は、遥か遠くの十七年で。梅の花にこぬか雨が降る春のよい時節がふたたび廻ってきた。

墓の前で、坐って頭を地面につけている礼をする者(=作者)の頭髪は、全て白くなってしまったが。以前に(=嬰児の時)ふところの中の乳を探し求めるた者(亡母の子で、老年になった作者)である。

備考

亡き母の十七回忌の法要。郷里の習慣にしたがって焼香して礼拝し、涙を流した後、この詩を作った。 *この作品は、作者が宋詩に傾倒したことを覗わせる詩である。