雪中の雑詩(続天 154)

吟譜(PDF)

作者:市河寛斎

(一七四九~一八二〇年)(寛延二年~文政三年)名を世寧と言い、上野の人。初め徂徠の門人大内熊耳に従って古文辞を学び、次いで関松窓から朱子学を学び、更に井上蘭台の門人高橋九峯に就いて折衷学を学ぶ。その後林鳳潭の門人となり昌平黌の員長となるが、鳳潭没後は職を辞し、詩社の江湖詩社を設立する。その後富山藩の儒臣となり、致仕後は長崎に遊ぶ。その書に、『日本詩紀』五十巻・『全唐詩逸』三巻・『寛斎遺稿』五巻・『寛斎百絶』一巻・『寛斎余稿』八巻・『陸詩意註』七巻・『宋百家詩』七巻等が有り。

語釈

*破牕・・・・破れた窓。
*五更・・・・午前三時頃から五時頃まで。
*八尺・・・・ここでは「長身」の意。
*氷柱・・・・つらら。
*水晶簾・・・水晶で作ったすだれ。ここではつららが垂れ下がっっているのをいう。
*玲瓏・・・・玉のような透明な美しさの形容。

通釈

敗れた窓からは、夜明け前の身を刺すような寒さの風が入ってきて、ひとしお骨身にしみ渡る。だから大きな体を弓のように曲げて、縮まって寝ているのである。外を見れば、軒からは何本ものつららが垂れ下がって、地にとどくほどであり、まるで水晶のすだれをかけたようで、そのむこうに透き通るような月の光が照り輝いている。

範吟

範吟 鈴木精成