西宮愁怨(続天 157)

吟譜(PDF)

作者:王昌齢

(六九八~七五五年)盛唐の詩人。京兆の人。字は少伯。就任した官職の地名から、王江寧、王竜標とも称せられる。山西省太原に本籍を持ち、京兆・長安に生まれたらしい。七二七年に進士となり、祕書省の校書郎から七三四年に博学宏詞科に及第して汜水(河南省)の県尉となったが、奔放な生活ぶりで江寧(こうねい)の丞・竜標(湖南省)の県尉に落とされた。その後、七五五年安禄山の乱の時に官を辞して故郷に帰るが、刺史の閭丘暁(りょきゅうぎょう)に憎まれて殺された。後に閭丘暁は、安禄山軍の侵攻に対し、唐側の張巡を救援しなかった罪で、唐の張鎬に杖殺された。この時、閭丘暁は「親がいるので、命を助けて欲しい」と言ったが、張鎬は、「王昌齢の親は誰に養ってもらえばいいのか?」と反論し、閭丘暁は押し黙ったと伝えられる。

語釈

*芙蓉・・・・はすの花
*美人・・・・前漢の成帝の妃であった班婕妤(はんしょうよ)のこと
*水殿・・・・池のほとりに建てた宮殿。
*珠翠・・・・真珠や翡翠の髪飾り。
*秋扇・・・・秋の扇。扇は秋になれば用がなくなり棄てられるところから、寵を失った女性(班婕妤)にたとえる
*懸明月・・・ 夜空のかかる月にわが身を照らされること。

通釈

蓮の花だって着飾った彼女の美しさには適わない。水上のこの宮に風が入ってきて、簪に花の香りを載せる。胸の想いを押し沈めながら、秋の扇を隠し、名月に徒に君の御幸を待つ我が身を照らす。

備考

漢の成帝の寵妃であった班婕が寵を失い長信宮に移ってからのやるせない思いを王昌齢が詩にしたもの

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)