清平調詞(その二)(続天 159)

吟譜(PDF)

作者:李白

(七〇一~七六二年)中国,盛唐の詩人。字,太白。号,青蓮居士。若い頃は任侠を好み,四川を振出しに,江南,山東,山西を遊歴。 四十二歳のとき長安に出て賀知章らに推挙されて翰林供奉 (ぐぶ) となったが,高力士に憎まれてまもなく追われ,また放浪生活に入り,その間,杜甫とともに旅をしたこともある。のち安禄山の乱のとき永王の軍に加わったため夜郎 (貴州省) に流されることになり,途中で大赦にあい,また各地を往来するうちに安徽省で死んだ。杜甫とともに中国最高の詩人として「李杜」と並称され,杜甫が「詩聖」と呼ばれるのに対して「詩仙」と呼ばれる。絶句と楽府 (がふ) を最も得意とし,自由奔放で豪快な盛唐の詩風を代表する。詩文集『李太白集』がある。

語釈

*一枝・・・ひとえだ
*紅艷・・・あざやかな紅い牡丹の花
*雲雨・・・神女の姿。楚の懐王が夢の中で巫山の神女と交わった。神女は、朝には雲に、夕方には雨になって会いたいと言った。
*巫山・・・重慶市巫山県と湖北省の境にある名山。楚の懐王が夢の中で巫山の神女と交わった。
*借問・・・尋ねる。
*飛燕・・・趙飛燕。前漢の成帝の寵愛を受けた。美人の代名詞。しかし後年、王葬に弾劾されて庶民となり、自殺した。
*枉・・・・いたずらに。むなしく。
*新粧・・・化粧を新たに塗りたてて。

通釈

一枝のあざやかな紅い牡丹の花が、露にまみれ、香りを漂わせている。 雲となり雨となっても貴方と会いたいと言った巫山の神女も、 楊貴妃の前では空しく心砕かれるだけでしょう。お聞きします。漢の後宮の中で、他にこんな美人がいますか。その可憐さで知られる、前漢の飛燕が新しく化粧を装っている姿。それこそが楊貴妃と並び立つものでしょう。

範吟

範吟 鈴木精成