草庵雪夜の作(続天 167)

吟譜(PDF)

作者:良寛

寶暦八年(一七五八年)~天保二年(一八三一年) 江戸後期の禅僧。。漢詩人。歌人。越後国(現・新潟県)出雲崎の人。俗姓は山本。名は栄蔵、後、文孝と改める。号は大愚。諸国を行脚、漂泊し、文化元年、故郷の国上山(くがみやま)の国上寺(こくじょうじ)に近い五合庵に身を落ち着けた。晩年、三島(さんとう)郡島崎に移った。高潔な人格が人々から愛され、子供達も慕ったが、人格の奇特さを表す逸話も伝わっている。ただ、遺されている漢詩は陰々滅々として、類例を見ないほど暗いものである。

語釈

*草庵・・・草ぶきの庵(いおり)。藁などで屋根を葺いた粗末な家。
*囘首・・・ふりかえる。
*人間・・・この世。現世。人の世。世間。

通釈

草庵での雪の夜の詩作。

七十余年をふりかえれば。この人の世の是非善悪を見破り(道理を説く)ことには、飽(あ)きてしまった。行き来する道の足跡は、深夜に降る雪のために幽(かす)かになって。一つの線香の火が古びた窓の下にある。それは、わたし・良寛の生命の微かなともしびでもある。

範吟

範吟 鈴木精成