村夜(続天 168)

吟譜(PDF)

作者:白 居易

(七七二~八四六年)。中唐の詩人。字は楽天。号は酔吟先生・香山居士。弟に白行簡がいる。鄭州新鄭県(現河南省新鄭市)に生まれた。子どもの頃から頭脳明晰であったらしく五~六歳で詩を作ることができ、九歳で声律を覚えたという。家系は地方官として役人人生を終わる男子も多く、抜群の名家ではなかったが、安禄山の乱以後の政治改革により、比較的低い家系の出身者にも機会が開かれており、八〇〇年、二十九歳で科挙の進士科に合格した。三十五歳で盩厔県(ちゅうちつけん、陝西省周至県)の尉になり、その後は翰林学士、左拾遺を歴任する。このころ社会や政治批判を主題とする「新楽府」を多く制作する。八一五年、武元衡暗殺をめぐり越権行為があったとされ、江州(現江西省九江市)の司馬に左遷される。その後、中央に呼び戻されるが、まもなく自ら地方の官を願い出て、杭州・蘇州の刺史となり業績をあげる。最後は八四二年に刑部尚書の官をもって七十一歳で致仕。七十四歳のとき自らの詩文集『白氏文集』七十五巻を完成させ、翌八四六年、七十五歳で生涯を閉じる。

語釈

*村夜・・・村里の夜。村里の月明の夜の情景。
*霜草・・・しもの降りた草。
*蒼蒼・・・老いたさま。頭髪の白髪交じりのさま。ここでは、霜の降りた草のようす。
*切切・・・胸に迫るように悲しいさま。

通釈

しもの降りた草は、白髪交じりの頭髪のように老いた姿をして、秋の虫の鳴き声はもの悲しげで胸に迫まってくる。村のどこも、道行く人は途絶えて静まりかえっている。ひとりだけで、正門外に出て、田野を遠くまで見わたせば。月明かりの下に、ソバの白い小さな花が畑一面を覆い、そのため、雪のように真っ白に輝く畑が続いている。