田園雑興(続天 179)

吟譜(PDF)

作者:范 成大

(一一二六~一一九三年)は南宋の有能な愛国政治家であり詩人。二十九歳で進士及第。官吏の途を歩み終に宰相となり四十九歳の時、北方の金に使し皇帝を前に堂々と困難な交渉に当った。晩年は郷里 蘇州に隠退し、四季の農民の暮しぶりを詠じた連作 「四時田園雑興」六十首を作った。この詩はその中の一首で、冬の夜のつましい農民の楽しみ詠んだもの。農民への愛情のこもった佳作です。

通釈

つがいの蝶々が菜の花畑にはいっていく、春の日はながく農家を訪れる客はいない。

すると鶏が垣根を飛びこえ犬は穴から吠えたてる、それで行商人が茶を買いつけに来たとわかるのだ。

備考

「晩春」其の三の詩でも、のどかな農村風景が描かれます。そこに突然、鶏がばたばたと飛びあがり、犬がくぐり穴から吠えはじめます。「竇」は犬の出入り用に掘った塀の穴のことです。何ごとかと驚きますが、例年のように行商人が茶の買いつけに来たのだと納得するのです。当時、茶は専売品で、免許のある仲買人が買い集めるものでした。