冬初の出遊(続天 185)

吟譜(PDF)

作者:陸 游

(りく ゆう)(一一二五~一二一〇年)・南宋の政治家・詩人。字は務観。号は放翁。通常は「陸放翁」の名で呼ばれる。
越州山陰(現在の浙江省紹興市)出身。南宋の代表的詩人で、范成大(はんせいだい)・尤袤(ゆうぼう)・楊万里(ようばんり)とともに南宋四大家のひとり。とくに范成大とは「范陸」と並称された。現存する詩は約九二〇〇首を数える。その詩風には、愛国的な詩と閑適の日々を詠じた詩の二つの側面がある。強硬な対金主戦論者であり、それを直言するので官界では不遇であったが、そのことが独特の詩風を生んだ。

語釈

*冬初出遊・・・冬の初めの外出
*渺渺・・・・・遠くはるかに広がっているさま

通釈

脚の悪いロバで、水がはてしなくけむる靄(もや)に包まれた渡し場を歩いてわたり、そこの十里ほどの、ささやかな山村に、新たな興味を起こした。それは何についてなのかというと、青い旗のかんばんの酒屋(さかや)や黄葉になっているお寺で、道で出逢う人々は、いずれもみな絵の中に出てくる人物であるかのようだ。