八月十五夜月前に旧を語る(続天 194)

吟譜(PDF)

作者:菅原道真

(八四五~九〇三年)平安時代中期の廷臣で漢学者,文人。是善の子。母は伴氏。右大臣。従二位。大宰権帥。菅公といわれる。貞観四 (八六二) 年文章生。同 十九年文章博士。以後,宇多天皇の信任を得,藤原氏を抑えるために重用された。寛平三 (八九一) 年蔵人頭。同六年遣唐大使となったが,彼の意思によって中止された。その後,権大納言を経て昌泰二 (八九九) 年右大臣となったが,同四年藤原時平のために大宰府に左遷された。編書『日本三代実録』『類聚国史』,詩文書『菅家文草』『菅家後集』がある。後世,天神として尊崇された。 (→北野天神縁起絵巻 , 天神信仰 )

語釈

*有古今・・・「古今」昔と今、に「有」は違いがあること。「不知有古今」は昔と今に違いがないこと。
*五更・・・・更(こう)」は夜の時間を区切って呼ぶ単位。 深夜の零時は「三更」に属する。「五更」は午前四時頃。
*珍重・・・・ここでは書簡語。お大事に。ありがたい。忝ない。などの挨拶に用いる。

通釈

[八月十五夜(はづきもちのよ)に月前に舊(むかし)を話(かた)る、各(おのおの)一字を分かつ]       菅原道真

秋月、古今有ることを知らず、一条の光色、五更を深し二十餘年(はたとせあまり)の事を談(かた)らんと欲するに珍重(ちんちやう)す、当初(そのかみ)蓋(きぬがさ)を傾(かたぶ)けし心を。