郷に回って偶ま書す(天 60)

吟譜(PDF)

作者:賀知章

(六五九~七四四)は盛唐の詩人で、淅江省蕭山県(せっこうしょうしょうざんけん)の人とされています。字は季真、四明狂客と号す。則天武后時代の科挙試験で合格した進士、玄宗時代に礼部侍郎(官僚の上級職)でした。中国の代表的な詩人である杜甫の漢詩仲間であり「飲中八仙の一人」とされています。お酒をこよなく愛飲し、老後は故郷に戻り八十六歳の大往生でした。酔って馬に乗る姿は揺れる船に乗るかのようで、井戸に落ちてもそのまま眠り続けると歌

通釈

若いときに故郷を出た私は、年老いてからようやく帰ってきた、国の訛りこそは抜けなかったものの、鬢はすっかり変わってしまった。

子どもたちは私が何処の誰かわからないらしい、にこにこ笑いながら「お客さんは何処からきたの?」たずねてきた。

備考

飲中八仙(いんちゅうはっせん)とは、中唐初めの八人の酒豪(賀知章、汝陽郡王李璡(じょようおう りしん)(李憲の長子)、李適之(りてきし)、崔宗之(さいそうし)、蘇晋(そしん)、李白、張旭(ちょうきょく)、焦遂(しょうすい))。また彼らを謳った杜甫の詩『飲中八仙歌』の略。

範吟

範吟 鈴木精成