芳野懐古(天 241)

吟譜(PDF)

作者:梁川星巖

(一七八九~一八五八年)(寛政元年~安政五年)美濃(岐阜)に生まれる。名は孟緯(もうい)、 号は天谷(てんこく)字は星巖。妻紅蘭(こうらん)と共に詩を好くし、天下を漫遊すること二十年。 天保五年江戸に出て玉池吟社(ぎょくちぎんしゃ)を起こし、江戸詩壇の盟主として名声高まった。 当時の詩人菅茶山、広瀬淡窓、菊池五山など ことごとくその門人である。常に尊王愛国の志厚く近体七律で、多くこれを時事に託している。 安政五年七十歳にて没す。著書に「星巌詩集」がある。

語釈

*芳野懐古・・・芳野の昔のことを思い出す。
*今來古往・・・昔から今まで 古往今来も同じ。
*茫茫・・・・・ぼんやりとしていてはっきりしない。
*石馬・・・・・神社の社前に見受けられる石で造った狛犬(こまいぬ)のこと。
*抔土・・・・・墓 ここでは御陵のこと。
*南朝天子・・・後醍醐天皇をはじめ南朝の天皇をさす。

通釈

吉野に来て南朝の昔の事柄を尋ねてみても、当時からすでに長い歳月を経ているので、何の事か ぼんやりとしていて、はっきりわからない。御陵の前の狛犬は何一つ語ろうとしないし、御陵も荒れるにまかせている。ただ桜の花だけは、春になると昔ながらに咲き乱れて山全体を真っ白に飾っていてまことに美しい。それはまるで、南朝の天子 の御魂の芳(かんば)しいことを、我々に伝えているかのように感じられるのである。

範吟

素読・範吟 鈴木精成

伴奏

伴奏(2本)

伴奏(6本)