赤間が関舟中の作(天 2)

吟譜(PDF)

作者:伊形霊雨

(一七四五~一七八七年)江戸中期の儒者。名は質、字は大素、通称は荘助、霊雨は号。

熊本県玉名郡玉東村に生まれ、家は代々農業をしていた。

幼少より読書・作詩を好み藩校時集館に入った。
教授の藪狐山は霊雨の詩をみて感嘆し、「李白また生まれる」と称したといわれる。

主著に 「霊雨詩集」あり。天明七年病のため没す。年四十三才没。

語釈

*赤間關・・・・赤間関とも言いまた馬関ともいう 今の下関のこと
*長風・・・・・大風 遠くから吹いてくる風
*三十六灘・・・数多い灘ということ 三十六は数の多いこと 灘は早瀬や難所のこと
*鎭西・・・・・九州の古称

通釈

遠くから吹きよせてくる風に送られ、浪を破って一そうの帆船が帰って行く。 青海原の遙かにめぐりまわるところは赤間関である。
はや瀬戸内海の多くの早瀬難所を乗り切ろうとするころ、はじめて天のかなたに我が郷里である九州の山山が見えてきたと喜びの思いを詠んだのである。

(備考)
藩命により五年間京都に遊学の後、帰国の際赤間が關を通り子の詩を作ったと終われる。

範吟

素読・範吟 鈴木精成