生田に宿す(天 6)

吟譜(PDF)

作者:菅 茶山

(一七四八~一八二七年)。名は晋帥(しんすい)、字は礼卿(れいけい)、通称を太仲(たいちゅう)と称し茶山 (さざん~ちゃざんともいう)はその号。寛延(かんえん)元年、備後神辺(びんごかんなべ:今の広島県深安郡)に生まれる。

京都に遊学し、のち故郷神辺に塾をひらき廉塾(れんじゅく)といい、住居を黄葉夕陽村舎(こうようせきようそんしゃ) と名づる。

詩名高く子弟多し、文政(ぶんせい)十年八月 八十歳にて没す。 著書に黄葉夕陽村舎詩前後編、その他多数ある。

語釈

*生田・・・・今の神戸市生田区(現中央区) その西に楠正成戦死の古戦場 湊川がある
*恩讐・・・・恩とあだ 味方と敵 ここでは南朝と北朝をさす
*弔忠魂・・・忠義の人 楠正成の魂をなぐさめる
*松籟・・・・松風の音…墓畔村…(楠正成の)墓のほとりの村

通釈

千年を経た今では、かって南朝と北朝とが戦った恩讐はもはや消えてしまって、 ただ風や雲ばかりがこの地を訪れ、永久に楠公の忠魂を弔っているかのように見える。 私は旅の一夜をこの生田に過ごし、松風の音に耳を傾けながら昔をしのんだ。

眠れぬままに窓の外を見ると 、月もほのぐらく、楠公の墓のあるこの村は、なんとも寂しい限りであった。

範吟

素読・範吟 鈴木精成