海に泛ぶ(天 17)

吟譜(PDF)

作者:王 守仁

(一四七二~一五二八年)中国、明代中期の思想家、政治家。字は伯安,号は陽明。ふつう王陽明とよびならわされる。

浙江省余姚(よよう)の人。父は南京吏部尚書王華。一四九九年の進士。明朝教学体系の中枢を占めた朱子学の権威に疑問の投げかけられはじめた思想・社会状況のなかで、王守仁は思想形成をなし、独自に良知心学を樹立して、強烈な朱子学批判を行った。ために思想界は朱子学の呪縛から解放されて、彼の出現以後の思想界は百花斉放の観を呈した。

語釈

*険夷・・・・・・・土地の険しいことと平らなこと。転じて幸不幸
*海濤三万里・・・・大海原
*錫・・・・・・・・僧侶・修験者の持つ杖(頭部はすずで作り、数個の鐶を掛ける)
*錫を飛ばして・・・行脚するの意もある

通釈

人生行路の幸、不幸などに動揺せず我が胸中を去る。喜怒哀楽、幸不幸なんぞ、大空を流れてゆく浮雲のようなもの。

今宵、静かな中、三万里の大海原を舟が進む、その爽快さは、月明りの中で錫杖を飛ばし、天風に乗じて一気に下るごとくはればれした気持ちになる。自然は何と素晴らしきかな。