江戸各裏雑詩(天 20)

吟譜(PDF)

作者:頼杏坪

(一七五六~一八三四年)(寶暦六年~天保五年)。江戸中期の儒者。漢詩人。三次町奉行を務める。名は惟柔。字は千祺、号して春草。杏坪は、後期の号。安芸の竹原の人。亨翁(こうおう)の四男(通称:萬四郎)として生まれた。頼山陽の伯父に当たる。

語釈

*江都客裡雑詩・・・江戸に旅している間に、興の趨(おもむ)くままに作った、型にとらわれない詩
*八百八街・・・・・江戸中の町々の称。江戸の市中に町が多数あることを謂う。八百八町(はっぴゃくやちょう)   *売虫声・・・・・・(虫屋で)売っている(鈴虫や松虫といった、鳴く)虫の声の意
*貴人・・・・・・・身分の高い人
*不解・・・・・・・理解しない
*籠間語・・・・・・(虫)かごの中の(虫の)鳴き声を謂う
*総是・・・・・・・全部。いつも。例外なく。とにかく
*風露・・・・・・・風と露(つゆ)
*情・・・・・・・・思い。感情

通釈

江戸中の町々に、宵(よい)の月が明るい時刻。秋風に、ほうぼうで虫屋で売っている鈴虫や松虫といった、鳴く虫の声がする。

身分の高い人は、虫かごの中の虫の鳴き声が例外なく、西の方の郊外の風と露(つゆ)の思い(秋の実際の姿)であることを理解しない。