花朝澱江を下る(天 41)

吟譜(PDF)

作者:藤井竹外

(一八〇七~一八六六年)江戸末期の詩人。摂津(大阪府)高槻藩の名門に生まれる。

頼山陽に教えを受け、梁川星巌・広瀬淡窓らと親交を結んだ。七言絶句をもっとも得意とし高く評価され「絶句の竹外」といわせた。

語釈

*花朝・・・・陰暦二月十五日のこと。花神の生まれた日、又百花の生まれる日という。\
*澱江・・・・淀川のこと。
*背指す・・・後方の空を望む。
*弧鴻・・・・一羽の雁。雁の大きなのを鴻という。
*比良・・・・滋賀県滋賀郡にあり、琵琶湖の西岸にそびえる近江第一の山。
*江州・・・・近江の国(滋賀県)

通釈

桃の花が咲き、水も温む淀の川中を、わが乗る小船は流れて行く。ふと川上の方を振り返ったとき、一羽の雁が遠い空のかなたに消え入ろうとしているのが目に入った。雁のゆくてに高くそびえる平良比良山のやま、その一角にはまだ残雪が白々と輝いている。すると、春風はまだ江州には訪れていないらしい。